なぜ石丸伸二は「消え」、映画『国宝』は「熱狂」がつづくのか?

~SNSで勝つための「6:4の黄金比」と、ビジネスを焼き尽くさないための「定住」戦略~

2026年1月15日

2026年1月。 2年前にあれほど世間を席巻した石丸伸二氏の話題を、今はほとんど見かけなくなりました。一方で、映画『国宝』の感動は、公開から時間が経ってもタイムラインを熱く埋め尽くしています。

一見、無関係に見えるこの二つの現象。しかし、ここには残酷なまでの「ヒットの法則」と、そこから一歩進んだ「生き残りの条件」が隠されています。

できるかぎりわかりやすく、「熱狂の違い」という謎を解き明かしてみたいと思います。

そもそも、私たちはなぜSNSで情報をシェアするのでしょうか? 
「良い情報だから」”だけ”ではありません。そこには、もう少し人間臭い「矛盾」があります。

爆発的にコンテンツが拡がる時には、必ず以下の「6:4の黄金比」が含まれています。

6割の「正当性(建前)」= 盾(たて)

「これは社会的に意義がある」「みんなが知るべき便利な情報だ」
これは、他人からの批判や「痛い人」という視線から身を守るための「盾」です。

4割の「自分語り(本音)」= 矛(ほこ)

 「こんな情報を知っている私、センスいいでしょ?」「この深い話が分かる私、賢いでしょ?
これは、他者のタイムラインという戦場に、自分の存在を突き刺したいという「矛」です。

人は、ただの「矛(自慢や主張)」だけでは、不用意に他者を傷つけたり、反撃(炎上や冷笑)を受けたりするのを恐れて動けません。強力な「正当性の盾」があって初めて、私たちは安心して「みんなのために(盾)」と言いながら「私を見てくれ(矛)」と主張できるのです。

この黄金比で2024年の石丸氏を見ると、当時は「盾と矛」が完璧に機能していました。 「腐った政治を直す」という最強の盾があったからこそ、「それを支持する賢い若者である私」という矛を、堂々と振りかざすことができたのです。

しかし、2026年の今、そのバランスは完全に崩壊しています。 彼の人間性や主張、安芸高田市時代の実績などいずれも目を見張るものばかりで、私自身強く関心を持ちました。しかし東京都知事選立候補以降、政治的な実質的成果(栄養)が見えず、「論破」というエンタメ(刺激)だけが露呈する形となって、6割の「盾」が消滅したのです。

 盾を失った状態で彼を語ると、どうなるか? 防具なしで戦場に立つようなものです。「ネットの流行りに踊らされている人」というレッテルを貼られるリスクに耐えられず、みんな静かに手を引いたのです。

一方で、映画『国宝』はどうでしょうか。 歌舞伎という伝統、圧倒的な演技力という、加えて複雑な様式美の中でのエロスと死の欲望。「6割の正当性(盾)」は盤石です。その安全地帯の中で、ユーザーは「この情念の世界を理解できる私(矛)」を存分に表現できています。

しかし、『国宝』が石丸氏と決定的に違うのは、ここからです。 それが、「焼畑」で終わるか、「定住」させるかの違いです。

1. 焼畑モデル(石丸伸二氏の事例)

石丸氏のブームは、動画を見てスカッとするだけの刺激に依存した「焼畑」でした。 刺激的な強い発言(燃料)を投下して一気に市場を燃え上がらせ、PVという果実だけを収穫する。だが、焼き尽くされた土地(ユーザーの関心)は瞬く間に養分を失い、もはや同じ手法は通用しません。常に新たな森を焼き続けなければ維持できない自転車操業は、燃料が尽きた時点で破綻し、そこには何も残りませんでした。

2026年1月、解散風という新たな薪がくべられようとしていますが、一度死んだ土壌が、かつての熱狂を再現することは難しいでしょう。

2. 定住モデル(映画『国宝』の事例)

対して『国宝』は、ユーザーを「定住」させています。 ここで言う「定住」とは、物理的に住むことではありません。脳内の『検索』や『比較』という活動を停止させ、そのブランドの圏内に留まらせることを指します。

映画を見るだけでなく、原作を読み、出演者のドキュメンタリーを追い、感想を語り合う…。かつてのスターウォーズがそうだったように、一度その世界観(生態系)に定住したファンは、もう他のエンタメと比較検討することなく、無意識にその関連コンテンツを選び続けます。あなたも、ヤフーショッピングのポイント大盤振る舞いCMをリビングで見ながらAmazonでしか検索しませんよね?それと同じです。

ビジネスにおける「勝敗の分かれ目」

これを自社のビジネスに置き換えてみてください。

多くの企業は、「どうやってバズらせるか」「どうやって振り向かせるか」というネタありき、企画ありきの「焼畑」戦略ばかり考えています。 しかし、AIが発達し、情報が溢れかえる2026年に本当に強いのは、一度出会ったお客様の無意識下に「定住」できるブランドです

お客様を、一回限りの燃料として燃やし尽くすのか。 それとも、長く暮らしてくれる住人として、許容されるブランドであり続けるのか。

一瞬のバズで終わるか、10年続く資産になるか。 その違いは、お客様を「攻略すべきターゲット(点)」として捉えているか、「人生を共にするパートナー(面)」として捉えているかの差にあると言えるでしょう。

比較検討の土俵で戦っているうちは、まだ二流です。 目指すべきは、Amazonの例のように、お客様が何かをしようと思った瞬間、「比較するまでもなく、無意識に選ばれている」という状態。

この「無意識下の指名買い」こそが、AI時代における最強の生存戦略なのです。

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